「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる株式会社ALE(東京都港区、代表取締役社長/CEO:岡島礼奈、以下ALE)は、2019年12月6日に打上げた人工衛星2号機(以下、2号機)の流星源(人工流れ星の素となる粒)装填動作用の部品が正常に動作していないため、2号機では人工流れ星を実現できないと判断いたしました。世界初の人工流れ星は、2号機を利用して2020年に実現する計画でしたが、開発中の人工衛星3号機(以下、3号機)を利用して2023年初期での実現を目指してまいります。
■2号機の状況
2号機は、人工流れ星の素となる粒を格納庫(①)から放出機構(①内)に送り出し、円筒内で加速して放出します(②)。軌道上の2号機から放出された粒が地球の大気圏に再突入して発光し、地上からは流れ星となって見えます。
しかし、地上局から2号機に対して動作指令を送信しても放出機構に粒が送り出されない状態です。詳細な検証を行った結果、粒の送り出しを行うための部品の一つが動きにくくなっており、所定位置に戻らなくなっていることが判明しました。その結果、送り出しの動作を開始できず、放出の動作に移行することができない状況となっています。
この動作不良の原因は、宇宙空間特有の影響だと考えられます。宇宙空間では、超高真空と呼ばれる高い真空度により、摩擦力が地上より増加することや素材同士が固着現象を起こすことがあります。検証の結果、この宇宙空間特有の影響が予測よりも大きく、動作に必要な力が設計値を上回っている可能性が高いという結論に至りました。
なお、上記以外の機能や機器(*)は、全て正常に動作していることを確認しております。
* 【バス部】通信、高精度な姿勢制御、衛星位置と方向の冗長判断機能。
【ミッション部】放出の冗長判断機能、バルブやピストンおよびセンサーなどの搭載機器。
■3号機以降の開発に向けた対策
宇宙環境を模擬して人工衛星をテストする設備として、これまで利用していたものより高真空な状態を再現できる機器を導入したことで、打上前により詳細な検証が可能となりました。また、社内の開発体制を強化しました。機械・電気・ソフトウェア等各分野のエキスパートを増員し、さらに宇宙開発に長年携わった人工衛星技術者、衛星地上システム技術者も新たに加わったことで、さらに質の高い設計、検証が可能です。
加えて、人工衛星バス部の開発においては、初号機や2号機と同様に、豊富な知見を有する東北大学と連携して進めていきます。
このように社内の設備や開発体制を強化するとともに、経験豊富な社外の知見を活用しながら、より盤石な体制で今後の人工衛星開発を進めてまいります。
2号機では人工流れ星の実現に至らなかったものの、衛星開発/打上/運用における一連の検証によって、人工衛星の設計方針が正しいことが確認できたと同時に、人工衛星の打上および運用のノウハウを蓄積することができたことにより、3号機での人工流れ星の確実な成功に近づいたと考えております。
■人工流れ星の実現
開発中の3号機を利用し、2023年に世界初の人工流れ星の実現を目指します。なお、開発スケジュールは下記を予定しております。
◇開発スケジュール
2021年内 :EM(エンジニアリング・モデル)完成
2022年中期:FM(フライト・モデル)完成
2022年後期:打上げ
2023年初期:商用運用開始
※時期はいずれも現時点での予定です。
■代表取締役社長/ CEO 岡島礼奈コメント
いつもALEを応援いただきありがとうございます。
2020年内の人工流れ星実現を楽しみにしてくださった皆様のご期待に沿うことができず、残念な気持ちでいっぱいです。今回人工衛星の一つの部品が上手く動きませんでしたが、それ以外はすべて正常に動作していることを確認できました。「本当にあと一歩だったのに!」と、宇宙に挑戦することの厳しさを改めて感じました。明るい話題が少ない時だからこそ、みんなで家から見える流れ星を実現したかったです。
私達ALEの人工流れ星への情熱は変わっておりません。得られたナレッジを3号機の開発に活かし、2023年初期に人工流れ星を実現したいと思っております。次回は必ず成功させます。引き続き応援いただけますようよろしくお願い申し上げます。