「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる株式会社ALE(東京都港区、代表取締役社長/CEO:岡島礼奈、以下ALE)は、日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下NTT)の先端集積デバイス研究所、国立研究開発法人理化学研究所(埼玉県和光市、理事長:松本紘、以下理研)の計算科学研究センター、大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台(東京都三鷹市、台長:常田佐久、以下NAOJ)と共に気象衛星開発について覚書並びに共同研究/実験契約を9月27日締結し、民間気象衛星で「自然災害」に挑む産学連携プロジェクトAETHER(アイテール)を発足しました。
近年世界中で自然災害の深刻度が増しています。特に気候変動に関係した災害の影響は大きく、過去20年の経済損失は2.245兆ドル(自然災害全体の77%)にも上ります。また地理的要因からアジアは自然災害の影響を受けやすく、中でも四方を海に囲まれた日本は最も被害の大きな国の1つです(*1)。この様な状況下で、我々ALEは宇宙を活用して理不尽な災害被害を少しでも減らしたいとの想いから産学連携プロジェクトAETHERを発足しました。各参画機関が各々の分野から得意技術を持ち寄り地球観測用の小型センサーを独自開発、それを搭載した気象衛星で宇宙から大気データを取得し、そのデータを基に気象予報の精度向上を図って、最終的には災害多発国である日本から世界中に今の地球環境に適した気象情報の提供をします。AETHERは民間気象衛星で気象予報に用いる観測データ取得を目指す日本初の取り組みとなります。
■発足の背景、特徴
気象予報は場所や時間に依らず広く安定した観測を基に行われることが理想です。ところが、実際は陸上に比べ観測手段が限定的な海上では観測データは十分ではありません。例えば、日本の様な島国に多い臨海地域の気象予報には海上を含めた広範囲のデータが特に重要です。人工衛星はこういった条件での広範囲の常時観測に適しており、これまでは政府の大型衛星がその役割を担い気象予報に貢献してきました。
しかし、大型衛星は製造や運用に莫大なコストを要する為、限られた国家予算の中でこれまで通り政府が衛星を運用し続けるのは簡単ではありません。一方で自然災害の増加で気象予報の重要性は高まっています。例えば豪雨や台風は数時間から数日先の情報が大切な現象で、これは気象予報にとしては比較的短い期間に相当します。それらの予報改善には観測頻度の高いより詳細なデータが求められますが、実現には技術向上や関連インフラの充実が必要です。
AETHERでは実用化が進むCubeSat(*2)を採用しコストを大幅に抑えます(1衛星あたり数百億円→数億円、プロジェクト規模で数千億円→数十億円と、約1/100の削減を想定)。また、気象予報に最も重要な大気中の水蒸気と温度を昼夜天候に左右されず観測できるセンサーとして「マイクロ波サウンダー」をCubeSat用に開発します。さらに、複数衛星とその運用技術による「衛星コンステレーション」で政府の大型衛星を補完する高頻度観測を提供し、民間から防災/減災に貢献します。
■各参画機関の役割
気象予報は現在を示す「観測データ」と未来をシミュレーションする「気象モデル」の2つを使って行われ、更に両者を繋ぎより正確な予報を実現する「データ同化」と呼ばれる技術が用いられます(*3)。AETHERではこれら3領域に見識のある専門機関が参画し、観測から予報まで一体となった研究開発体制を構築しました。
NTTは通信分野で培った高周波デバイス技術で、NAOJは電波天文学で培った観測機器技術で、各々小型マイクロ波サウンダー(*4)の核となるコンポーネントの研究開発を担当します。
理研はスーパーコンピュータ「富岳」に代表される大型計算機システムを用いた気象学の知見で、データ同化と気象予報を実行するソフトウェアの開発を担当します。
ALEは他事業で培った宇宙技術でハードウェア全体の取り纏めや衛星運用を担当しつつ、各機関の技術や知見を新気象事業に繋げるべくビジネス面も含めてAETHERを統括します。
■今後の予定
まずは要素技術開発、その後試作機による地上実証を経て、5年以内の宇宙実証を目指します。最終的には観測データから気象予報を基にしたソリューション・サービスまで、気象関連のサービス提供を計画しています。
■プロジェクト名AETHER(アイテール)の由来
AETHERは天空で神々が呼吸する澄んだ大気を神格化したギリシャ神話の神に由来し、この名前は消えることのない空の輝きを表現しているそうです。自然は時に災害として人類を脅かすことがありますが、我々ALEは自然をより良く理解する事で対策を立てられると信じています。
AETHERの名前には、我々の科学や宇宙を通した活動が変わりゆく地球環境下において理不尽を減らし幸せを増やす一助になれば、との願いが込められています。
■各参画機関コメント
◆日本電信電話株式会社 先端集積デバイス研究所長 岡田顕氏コメント
NTTではこれまで高速性能に優れるInP系トランジスタ技術の研究開発を進め、主に通信システムの高度化に貢献してまいりました。この度、我々の開発したデバイス技術が防災や気象予報など社会の安心安全という新たな領域で貢献する機会を得られたことを大変有り難く思います。
◆国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センター チームリーダー 三好建正氏コメント
「京」や「富岳」を使って新しい衛星データを活用し、天気予報を革新する先端研究を進めてきました。この世界をリードするトップサイエンスから、AETHERのセンサー開発、天気予報システム開発へと繋げ、日本発の民間気象衛星事業の成功と、理不尽な災害被害を減らすことに貢献したいと思います。
◆大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台 先端技術センター長 鵜澤佳徳氏コメント
私たちはこれまで、高感度の電波受信機を開発して野辺山45m望遠鏡や南米チリのアルマ望遠鏡に搭載し、天文学の発展に貢献してきました。また、私たちが培ってきた「天文学のための技術」を「暮らしを支える技術」として社会に役立てるため、産業連携室を設立したところです。今回、安心安全な社会を構築するために欠かせない気象予報に私たちの技術の貢献が期待されることを大変うれしく思うと同時に、身が引き締まる思いです。
◆株式会社ALE 代表取締役社長/CEO 岡島礼奈コメント
設立当初から「科学と社会をつなぐ」をミッションにしていたALEにとって、今回このプロジェクト発足を皆様にお伝えできることは非常に感慨深いです。気候変動や異常気象の解明、また気象活用による防災関連に向けて、科学の知見から社会課題解決に働きかけられるこのAETHERプロジェクトを素晴らしいメンバーとタッグを組んで進めていけること、嬉しい思いでいっぱいです。
*1)出典” Economic losses, poverty & disasters: 1998-2017"、ルーバン大学(ベルギー)災害疫学研究センター/国連防災機関共著
*2) CubeSat…101010 cmサイズ(重量約1.3kg)を基本ユニットとした衛星の共通規格。サイズに応じて”X”Uと表記され、”X”が基本ユニットの個数を示す。
*3)「気象モデル」を基にしたシミュレーションを実際の「観測データ」とつきあわせることで微修正し、予報精度を高めることを「データ同化」という。
*4) マイクロ波サウンダー…可視光線や赤外線より波長の長い、(サブ)ミリ 波を含むマイクロ波帯域の電波を検知するセンサー。検出したマイクロ波信号は水蒸気や温度等、大気の情報を含んでいる。
■株式会社ALEについて
ALEは「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる民間宇宙スタートアップ企業です。人工流れ星を始めとした宇宙エンターテインメント事業で宇宙の美しさや面白さを届け、人々の好奇心を刺激することで、さらなる宇宙開発のきっかけを作ります。また宇宙から貴重なデータを取得し、地球の気候変動のメカニズム解明に寄与することを目指します。更に、宇宙デブリ防止装置開発事業で軌道上環境の維持に貢献し、宇宙産業の持続的発展を目指します。これらのアプローチで、科学と人類の持続的な発展に貢献します。
社 名 : 株式会社ALE(エール)
本社住所 : 東京都港区芝大門2-11-8
代 表 者 : 代表取締役社長/CEO 岡島礼奈
設 立 : 2011年9月1日
事業内容 : 宇宙エンターテインメント事業「Sky Canvas」・大気データ取得・小型人工衛星技術の研究開発
U R L : https://star-ale.com/
■日本電信電話株式会社について
社 名 : 日本電信電話株式会社
本社住所 : 東京都千代田区大手町一丁目5番1号 大手町ファーストスクエア イーストタワー
代 表 者 : 代表取締役社長 澤田純
設 立 : 1985年4月1日
事業内容 : 移動通信事業、地域通信事業、長距離・国際電話事業、データ通信事業、その他の事業
U R L : https://group.ntt/jp/
■国立研究開発法人理化学研究所について
機 関 名 : 国立研究開発法人理化学研究所
本部住所 : 埼玉県和光市広沢2-1
代 表 者 : 理事長 松本紘
設 立 : 1917年3月20日
活動内容 : 自然科学(物理学、工学、化学、数理・情報科学、計算科学、生物学、医科学など)の研究
U R L : https://www.riken.jp/
■大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台について
機 関 名 : 大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台
本部住所 : 東京都三鷹市大沢2-21-1
代 表 者 : 台長 常田佐久
設 立 : 1988年7月1日
活動内容 : 天文学及びこれに関連する分野の研究、天象観測並びに暦書編製、中央標準時の決定及び現示並びに時計の検定に関する事務(文部科学省令第57号 国立大学法人法施行規則 第一条 国立大学法人法第五条第二項)
U R L : https://www.nao.ac.jp/