創業から7年、ついに株式会社ALEの人工衛星初号機が完成 〜 2019年1月17日、いよいよ宇宙へ 〜

2018.12.13 (Thu)

 世界初の人工衛星による人工流れ星の実現をめざす民間宇宙ベンチャー、株式会社ALE(東京都港区、代表取締役:岡島礼奈、以下ALE)は、人工流れ星ミッションに挑戦する人工衛星初号機(以下、初号機)が創業以来7年の開発期間を経てついに完成したことをお知らせいたします。初号機は2019年1月17日、人工流れ星ミッションの実現に向け、「革新的衛星技術実証1号機」の7機の衛星の一つとして国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)のイプシロンロケット4号機に搭載され、いよいよ宇宙へ旅立つ予定です。

        初号機外観

■CEO岡島のコメント

 先日完成した人工衛星をロケットに搭載する作業に立ち会いました。完成した人工衛星はただただ美しく、圧倒的な存在感を放って鎮座しており、これからこの初号機は宇宙に行くんだなと思うと、何とも言えない思いがこみ上げてきました。とうとうここまで来たな、という気持ちと、まだまだこれからだな、という気持ちの間にいます。
 どれだけの人に助けられたのだろうと、ことあるごとに考え続けています。実現に向けて一緒に夢を見てくれている皆様に、感謝しています。
これまでのALEの活動の中で、最大のマイルストーンであるイプシロンロケットの打ち上げが、成功することを切に願います。
 私たちの流れ星が基礎科学の発展に繋がりますように、そして、たくさんの方々に楽しんでいただけますように。

JAXAとの連携により人工衛星の安全性を追求

 初号機のミッションは人工衛星から物体を放出し、流れ星を発生させる世界ではじめての挑戦であることから、その安全を確保するための手段についても前例がありませんでした。ALEJAXAとともに、どのような安全対策を採用すれば他の人工衛星の安全を脅かすことなく人工流れ星ミッションを行うことができるのか議論を重ねてきました。

 その結果、人工流れ星を意図しない場所へ放出することのないように、人工衛星の姿勢を計測するセンサーを3台搭載し、その内1つでも異常を示した場合は流れ星放出ミッションを行わない厳重な対策を採用しました。初号機の安全システムは小型衛星クラスでは類を見ない水準にまで高められています。

 この過程はALEJAXAの、新たな宇宙ミッションの安全を確保する挑戦でした。

          第2回安全審査終了後の集合写真

初号機の挑戦は始まったばかり

 初号機には打ち上げ後にも、2つの大きな挑戦が待ち受けています。

 ひとつは、DOMR:De-Orbit Mechanism※1による軌道降下ミッションです。

 人工流れ星を実行するのは高度400kmより下の軌道なので、高度約500kmでイプシロンロケットより切り離された後、高度差約100kmを自力で降下する必要があります。その方法として、初号機は宇宙空間でDOMRによって膜を展開し、微小な大気抵抗を利用して少しずつ高度を下げます。この数ヶ月におよぶ軌道降下の旅もまた、今回の人工流れ星実現への重要なミッションとなります。

ふたつめの挑戦は、夜空に人工流れ星を輝かせることです。

世界ではじめての人工流れ星イベント

 世界初の人工流れ星は2020年春、広島・瀬戸内地域にて実施を予定しており、直径約200kmの広範囲で600万人以上の人々が流れ星を目にすることになります。ALEでは初号機と、現在開発中の2号機によって、この誰も成し遂げたことのない挑戦を推進していきます。

詳しくはこちらをご覧ください。

SHOOTING STAR challenge

https://shootingstarchallenge.com/

叡智を結集し成し遂げた人工衛星の開発 

 ALEの挑戦は、2009年にCEOの岡島が人工流れ星実現に向けて仲間を募ったことから始まりました。まず、流星源の開発に首都大学東京の佐原宏典氏、日本大学の阿部新助氏にご協力をいただきました。また、衛星本体の開発は東北大学の桒原聡文氏が手掛け、極めて高い信頼性を誇るシステムを実現しました。さらに、流星源放出機構の開発には神奈川工科大学の渡部武夫氏をはじめ、国内の精密加工業者や部品メーカーの力を結集し、この前人未到のミッションを成功させるための開発を行ってきました。

 人工衛星の開発に携わった方々のコメントは別添に記載しています。

革新的衛星技術実証へ採択された意義

 初号機が搭載されるイプシロンロケット4号機は、JAXAの「革新的衛星技術実証プログラム」の初めての実証機会である「革新的衛星技術実証1号機」で初号機を含む7機の衛星を打ち上げます。本プログラムは、民間企業や大学などが開発した機器や部品、超小型衛星、キューブサットにJAXAが宇宙実証の機会を提供するものです。

 初号機は、(1)人工流れ星の実現可能性とその市場性、(2)人工流れ星を観測することで流れ星が発光する高層大気の密度、風、成分等を観測、(3)人工流れ星の再突入による軌道の変化と現象の理解、の3つの項目を実証し、宇宙利用の新たな可能性を切り開く意義があります。

 イプシロンロケット4号機はJAXAの内之浦宇宙空間観測所より2019117日に打ち上げ予定です。

※1:DOMR:De-Orbit Mechanismは株式会社 中島田鉄工所(福岡県八女郡)の商標です。

【株式会社ALEについて】

 ALEのミッションは、「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」というものです。ALEは私たち人類の持つ無限の好奇心を、技術によって実現していくことを通じて基礎科学を発展させ、人類の生活をより豊かにすることをビジョンとしています。


社名:株式会社ALE(エール)
本社住所:東京都港区赤坂2-21-1 川本ビル2
代表者:代表取締役/CEO 岡島礼奈
設立:201191
事業内容:人工流れ星による宇宙エンターテインメント事業「Sky Canvas
人工衛星技術の研究開発

<別添>

初号機開発に携わっていただいた方々のコメント

桒原聡文氏のコメント(東北大学:衛星バスシステムの開発、及びシステムインテグレーション)

 ALEの夢のあるプロジェクトに携われたことを大変嬉しく思っております。初号機の開発は前途多難なものでした。数々の技術課題と安全面での配慮、スケジュール的な制約などを加味しながらの非常に密な研究開発活動でした。初号機には東北大学で培われてきた超小型人工衛星技術が集約されています。安全設計に関してはJAXA殿との技術調整を通し、二重故障許容設計を限られた電力と搭載質量で実現し、この内容は国際機関間スペースデブリ調整委員会においても認められ、ALEの地球低軌道での活動の安全性が世界に認められるものとなりました。この設計手法は2号機以降へも適用できるものであり、ALEの今後の発展を約束するものです。また、初号機の研究開発活動を通し、素晴らしいプロジェクトチームが結集しました。このメンバと共に初号機の運用、そして人工流れ星の実現に向けて引き続き全力で取り組んで参ります。

佐原宏典氏のコメント(首都大学東京:流星源の開発)

 ALE社がまだ岡島さんお一人で活動されていた頃にご相談を受けて以来、日本大学阿部先生、神奈川工科大学渡部先生とともに、どのように放出していかに明るく光らせるか、どのような軌道を描き無事消失していくかということについてお手伝いさせていただきました。本プロジェクトはエンターテインメントに留まらず、数々の高度な工学的知見及び技術を活かしながら、理学的にも高層大気の現象解明に貢献すると見込まれることから、科学・工学・エンターテインメントが三位一体となって宇宙を楽しみながら利用・理解していくというこれからの自立的な宇宙活動の先駆けとなることを期待しています。

阿部新助氏のコメント(日本大学:流星源の開発)

 流星群予報に基づく場所と時間にNASAの観測航空機を計画飛行させ、しし座流星群・流星嵐に遭遇し、流星科学という新たな分野で博士号を取得してから20年近くが経ちました。そして今回、人工的に流れ星をコントロールして、自分の好きな場所と時間に流星を何度も発生させて、地球大気突入体の発光物理の解明に挑めることに純粋に胸が躍ります。流れ星を光らせようという斬新な宇宙イノベーションに集った異分野の皆さんの叡智と技術が、見事に夜空を彩ることを期待し、新たな可能性の裾野を広げるALEの宇宙への挑戦に、今後も色々な形で協力して参りたいと思います。

渡部武夫氏のコメント(神奈川工科大学:流星源放出機構の開発)

渡部研究室は比較的初期のころからこの活動に参加させていただきました。特に、流星源供給機構の開発試作が印象深く、研究室の学生さんや大学の技術職員さんたち、協力してくださったメーカーの方々と一緒に、衛星に搭載される日を夢見ながら試行錯誤を繰り返したころを思い出します。流星源を一粒ずつ格納し、保護し、送り出す機構として、十分な機能を果たすものを作ることができたと考えています。この衛星から生み出される流れ星たちがさまざまな宇宙分野に応用され、その発展に貢献してゆくことを期待しています。

川口淳一郎氏のコメント(ALE技術顧問:人工衛星制御への助言)

 このたび、初号機が完成し、打ち上げ準備が整ったことを、こころから喜んでいます。ALE社のみなさまはもちろん、関係のみなさまのご苦労が実ったこと、よろこばしいかぎりです。

 小型衛星のビジネス性にはいろいろなバリエーションが存在しますが、人工流れ星は、直接に多くの人たちの関心に直結している点で、宇宙開発の中ではひときわ異彩をはなっているものと思います。

 多くのみなさん、こどもたちが夜空を見上げて、宇宙空間を身近に感じてもらえるなら、ビジネスを超えて何よりもの成果といえるのではないでしょうか。無事、初号機のミッションが叶うことを願ってやみません。

以上

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